インパクト投資の基礎:インパクト評価(IMM)の実施内容 3つのポイント
こちらの記事では、インパクト評価を実施する理由について紹介しました。
今回はその実施内容のポイントを紹介したいと思います。あくまでもImpactShareの解釈になりますが、昨今のグローバルな潮流を踏まえて解説を試みたいと思います。一方で、この分野の手法の開発は急ピッチで進められており、本記事でご紹介するのは、2021年現在のものになります。今後変更となる可能性はある旨、ご留意ください。
ちなみによく日本では、「インパクト評価」という言葉が使われていますが、正確にいうと、グローバルでは、「インパクト測定・マネジメント」(Impact Measurement and Management, IMMという)という言葉が使われています。前回の記事同様、本記事においても、グローバルでの使われ方に倣って、インパクト評価ではなく、IMMということにします。
IMMの3つの重要な要素
事業のアウトカムを特定する
IMMの第一段階として、対象となる事業が生み出すアウトカムを特定します。アウトカムとは、事業によって生み出される変化をいいます。そのアウトカムは、時間をかけないと実現できないものもありますので、短期的、中期的、長期的の3段階で分析することが一般的です。これらは「ロジックモデル」という手法を活用します。
詳細については、例えば日本財団による「ロジックモデルの作成の手引き」を参考していただくと良いと思いますが、完成形がどんなものなのかをここでは紹介しておきます。同手引きでに取り上げられている例を見てみると、学習支援事業の場合には、短期的アウトカムは学習意欲や学習習慣の向上となり、中期的アウトカムは学力の向上や進学率の向上、長期的アウトカムは、貧困が世代間連鎖しない社会とあります。
ビジネスが創出するインパクトを多面的に分析し、指標を設定する
アウトカムを特定した後、当該事業がどのような(WHAT)インパクトを、誰(WHO)に対して、どの程度(HOW MUCH)生み出していて、当該事業がアウトカムにどの程度貢献(CONTRIBUTION)していて、アウトカム創出にどの程度不確実性(RISK)があるのかを分析します。
この1)WHAT、2)WHO、3)HOW MUCH、4)CONTRIBUTION、5)RISKの5つの次元で分析する手法は、Impact Management Projectという団体が開発した「インパクトの5つの基本要素(5 DIMENSIONS of IMPACT )」という手法に則って行われることが一般的です。
それぞれを表す指標をGIINのIRIS+という指標カタログを使って検討します。例えば以下では、就労支援事業を通じて従業員が給料を得られるといった事例をもとに作成されています。
モニタリングをし、PDCAを実行する
あらかじめ設定したインパクト指標を達成するよう、事業会社は事業活動を行います。定期的にインパクト投資家と指標の達成状況についてモニタリングをし、どのように改善していけるのか、議論をします。その改善を繰り返すことで、インパクト指標の目標に近づき、創出するインパクトの拡大を目指します。
簡単ではありますが、IMMの重要なポイントをご紹介しました。
本分野は、日本においても実務者を中心に調査研究が進められています。今後の実践知の蓄積に期待しています。
【参考資料】
Impact Management Project 5 dimensions of impact
Global Impact Investing Network IRIS+
「インパクト投資の基礎」シリーズにご関心ある方は、こちらもご参照ください。