最新の海外レポート紹介②:インパクト・パフォーマンスレポートにおける主要な要素
前回は、インパクト投資におけるインパクト測定・マネジメント(IMM)の取り組み事例を調査したレポートを紹介しました。今回は、同じくインパクト評価及び検証を専門とするアドバイザリー企業であるBlueMarkから今年の4月に発行された、インパクトパフォーマンスの調査と方法について検証を行ったレポートを紹介します。前回同様、こちらのレポートの日本語抄訳・まとめも社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(Social Impact Management Initiative, SIMI)のグローバルリソースセンターに掲載されています。
英語原文:Raising the Bar: Aligning on the Key Elements of Impact Performance Reporting
日本語サマリー:報告⽔準を⾼める ーインパクト・パフォーマンス報告の主要な要素ー
本レポートは、質の高いインパクト・パフォーマンスレポートの具体的要素を知る上でに参考になる調査となっています。以下、調査内容の一部を紹介します。
インパクト・パフォーマンス測定方法の発展と課題
インパクト投資業界は成長しているにもかかわらず、投資決定に有用なインパクト・パフォーマンスデータを収集・測定することには課題が多く残っています。近年は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)によるフレームワークの統合や、EUのサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)による報告義務などを背景にサステナビリティやESG関連の情報開示に関しては急速な進展が見られます。一方で、インパクト・パフォーマンスの報告では、様々なインパクト測定・マネジメント(IMM)のフレームワークが未だ統一されておらず、更に独⾃の⽅法で取り組むインパクト投資家も多く存在します。
本調査レポートでは、87%のインパクトレポートは、ファンドの包括的なインパクト目標を説明しているという結果がでています。しかし、76%のレポートが目標を標準的な枠組み(SDGsなど)に整合させているのに対し、数量的な目標値を示しているのは37%のみという結果がでています。具体的な数値の設定と測定が課題の一つと言えます。
質の良いインパクトレポートの意義
本調査レポートでは、質の良いインパクト・パフォーマンスを報告することの意義について、下記のように述べています。
インパクトファンドに出資を行うアセットオーナー(LP)へのメリット
インパクト・デュー・デリジェンス:投資先であるファンド・マネージャー(GP)のインパクト戦略の信頼性の検証
エンゲージメント:投資先の機会とリスクの把握による管理と改善
LPのクライアントへの外部報告:インパクト創出に対する出資であることの証明
学びと改善:インパクト戦略とアプローチの点検
インパクト投資を行うファンド・マネージャー(GP)へのメリット
インベスター・リレーションズ(IR):信頼の獲得と将来の投資呼び込み
投資先とのエンゲージメント:透明性の確保とインパクト目標との整合性確
学びと改善:インパクト・パフォーマンスの有効性の確認と改善によるインパクト投資業界の信頼性の獲得
質の高いインパクト・レポートの主要な要素
本調査レポートでは、基本的な要素として理解しやすいフォーマットや指標の基礎となる計算や情報の引用などの明確性(Clarity)と、ポートフォリオレベルと各投資両方の分析と、ポジティブなインパクトだけでなくリスクの正負の網羅性(Completeness)が包括的要素として重要としています。
さらに、下記の要素を含まれるべき具体的な情報の種類の重要なカテゴリーとしてあげています。
本レポートの調査結果の詳細は、こちらから和訳要約資料を閲覧いただけます。
今回は、インパクト投資家がインパクト・パフォーマンス報告の意義や、主要な要素について調査したレポートを取り上げました。皆さんのご参考になれば幸いです。
また、インパクト測定・マネジメント(IMM)の方法については、過去に ImpactShareにて インパクト投資の基礎:インパクト評価(IMM)の実施内容 3つのポイントとして解説していますので、具体的なパフォーマンス測定の手法事例についてはこちらをご確認ください。
参考資料