世界中には社会課題をビジネスで解決しようとする取組みがたくさんありますが、その事業性を理解してもらえなかったり、リスクが高すぎると判断されてしまったりするなど、資金調達することがなかなか難しい状況のようです。
お金の出し手として、事業会社(あるいは、企業財団)による寄付もあリますが、持続性が心配(例えば、経営成績が悪くなった時に寄付をなくしてしまうなど)な一面もあります。スタンフォードソーシャルイノベーションレビューの最新号(2021年冬号)のこちらの記事で寄付とは異なる仕組みが紹介されていたので、本記事はその概要をご紹介したいと思います。なお、概要執筆にあたり、誤訳のないよう細心の注意を払っていますが、ご関心ある方は原文(英語)をご参照ください。
A Guaranteed Return (by Adrienne Day)
Stanford Social Innovation Review Winter 2021
=====(以下、記事の概要)=====
大企業はしばしば内部留保を持っているが、リスク回避に対する意識が強い。
Good Returnsが2014年に立ち上げた、Good Returns Cycle Programは、大企業が社会課題をビジネスを通じて解決する企業を1年間支援した後、資金が手元に戻ってくることが保証されたファンドを構築。
このプログラムを通じて、社会課題の解決を支援するだけでなく、企業が持続可能なインパクトを生み出すことを支援。
伝統的な寄付活動では、大企業が目標を達成するために提供できる金額には上限あったが、ローンを利用することで、「資本提供の幅が広がる」と言われている。
2019年にこのプログラムに参加した大企業は、利益を確保することができた。
プログラムの目標は、事業会社による寄付を代替するものではなく、補完するものである。
パイロットプログラムは、2019年ORIX USA(日本のORIX株式会社のアメリカ子会社)の財団、ORIX Foundationと実施。240千ドルのローンが提供された。ORIX USAの本店所在地のあるダラスで活動する、3つのNPO(Miles Freedom, Akola, PeopleFund)に行われた。ローンによって3団体とも事業拡大に成功。
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少し古いですが、アメリカのFoundation Centerが2015年に行った調査結果によると、アメリカには企業財団が2,468財団あり、年間5Bドルが寄付されており、増加傾向にあるそうです。
ファミリー財団も合わせれば、その数は4万財団を越えます。アメリカのNational Center for Family Philanthropyが2019年に行った調査(ファミリー財団2500財団にアンケート調査を実施)によると、寄付ではなく投融資を行っていると答えた財団は2015年から2倍に増えており、今後も増えていく傾向にあるそうです。
需要が高まっていることから、お金の出し手にとって(もちろんビジネスの担い手にとっても)使いやすいスキームが今後も出てくることが期待できそうです。