2019年4月にNasdaq上場したBeyond Meat。アメリカでは、ここ20年で最も成功したIPOの一つと言われていますし、一部ではこのIPOをインパクトIPOやSDGsIPO?!と呼ぶ声もあり盛り上がっています。
Beyond Meatは植物肉のメーカーですが、創業当初から環境問題解決の想いが強く、自社が生み出す環境へのポジティブな影響を分かりやすく開示しています。インパクト投資を受けたい会社、インパクト投資をしたい会社のインパクトに関する情報発信の手法としてとても参考になるものと思い、今回の記事で取り上げてみました。
Beyond Meatは何を売っている会社?
Beyond Meatは2009年に米国ロサンゼルスにてEthan Brownが創業しました。エンドウ豆を主原料とした、本物の牛肉加工食品に非常に近い味と食感の植物肉を生産・販売し、急速な成長を遂げてきました。筆者も2019年に米国でこの植物肉を食べましたが、本物の肉に非常に近い味でとても美味しく、感動した記憶があります。商品の例はハンバーガーのビーフパティ、ソーセージ、ミートボール等で、スーパーマーケットをはじめ様々な場所で販売されています。
またBeyond Meatは2019年頃からBtoB販売を加速させ、その後McDonald’s、TacoBell、Pizza Hut等とコラボレーションしています。これに伴い、米国内の様々なファーストフードチェーンで、植物肉メニューが取り扱われ始めました。
創業者はクリーンエネルギーに関心をもって開発を進めた
Beyond Meatの創業話を調べてみると、大変興味深いのは、創業者Ethan Brownの環境保護への想いです。
Beyond Meatは食品業界のプロや研究者が始めたスタートアップかと思いきや、Ethan Brownのそれまでのキャリアはクリーンエネルギー分野の専門家です。彼は energy analystとして政府機関のエネルギー排出を分析し、エネルギー削減を提言する仕事でキャリアをスタートさせました。その後、クリーンエネルギー関連のスタートアップで働いたり、クリーンエネルギー関連の修士号を取得しています。彼がBeyond Meatを創業した大きな理由は、食肉畜産過程におけるCo2排出を減らす事でした。創業当初から、植物肉がCO2減や気候変動に与えるインパクトを信じ、Beyond Meatを大きくしてきたのです。その想いは、会社のホームページ、上場目論見書、株主への報告資料など様々な所で見ることが出来ます。
2019年に上場し、過去20年で最大のIPO初値上げ幅を記録
Beyond Meatは2019年5月に上場しました。$46の公募価格が初日クローズ時に$65.75となり、1日で63%の上昇を記録しました。これは過去20年米国でIPOした企業の中で、最高の初日上げ幅となりました。
その後も株価は上昇を続け、同年7月末には$230にまで達しました。その後、業績やコロナ禍により株価の上下動を繰り返し今に至っています。
以上、今回は、クリーンエネルギーへのパッションを持った起業家が、自らの専門分野と全く違う分野で起業し、成功し、歴史的なIPOを果たした、というアメリカンドリームの様な話をまとめてみました。次回は、Beyond Meatをもう少し掘り下げ、特徴的な同社のインパクト情報開示の取り組みについて纏めたいと思います。
【参考】