インパクト投資にあたっては、インパクトの可視化、「インパクト測定及びマネジメント(英語では、Impact Measurement and Managementといい、IMMと略します)」が重要です。投資家は、投資後に投資先からインパクト情報の報告を受けることになりますが、それをエクセルシートでまとめて、分析して…と管理するのは大変です。その手間を省くために投資家やインパクト企業に対してデータ収集やデータ分析を容易にする様々なソフトウェアが提供されており、実際に海外のインパクト投資ファンドでは、そういったサービスが活用されています。しかし、投資家の需要増に伴い、そういったサービスの提供者は複数存在します。アメリカの老舗インパクトVCファンドであるSJF Venturesがそれらをマッピングし、分析した記事が興味深かったので、その内容を紹介します。
なぜSJFは分析を行ったのか?
SJF Venturesはこちらの記事でご紹介しましたが、22年以上インパクト投資を実施してきている、アメリカの老舗インパクトファンドです。彼らが初期に活用していたのは、2011年にローンチしたイニシアティブ、Global Impact Investing Rating System (GIIRS)でした。GIIRSは、B Impact Assessment (BIA)という評価ツールにをもとにレーティングされ、ガバナンス、労働者、地域社会、環境、顧客、情報開示に関する200の質問をもとにレーティングされていました。このツールは、案件レベル及びポートフォリオレベルでの評価することができ、異なる業界や地域の投資ファンドを比較するためのスコアとして活用されていました。SJFでは、2011年よりGIIRSを取り入れ、GIIRSから40種類指標、それに加え、投資先企業ごとに重要なインパクト指標(Key Impact Indicators)を10種類の指標に沿ってインパクトデータ収集をしていました。
GIIRSイニシアティブが2019年に終了となった際、SJFはデータ収集プロセスの見直しを行いました。GIIRSに代わるスコアリングを求めるのではなく、独自の指標セットを作成することにしました。GIIRSの中から、投資案件の審査時及び投資後の企業へのハンズオン支援に最も関連する主要なESG関連指標をピックアップし、それらと投資先企業固有の重要なインパクト指標を組み合わせました。SJFが社内で自由ににカスタマイズできるよう、まずはデータ収集したものはエクセルに入力していましたが、いずれものすごい大量のファイル数になってしまったので、ソフトウェアを探すことになりました。
インパクトデータの収集・分析サービス提供会社マッピング
サービス提供会社を調査していくと、3つの特徴があることが分かりました。
提供される製品の種類の豊富さと汎用性の高さ:市場にある製品の種類が多いため、使用者側が求める要件と制約を明確にする必要があります。
投資家からの需要の高さ:SJFは、Impact Capital Managers(ICM)という、市場リターンを追求するインパクト投資家のアメリカのコミュニティで悩みを共有したところ、多くの投資家も同じ種類のツールを求めていることに気づきました。今までは構造化されていなかったデータをソフトウェア活用を通じて整理することによって、よりIMMの実践をシステマティックにできる可能性に関心を持っている投資家もいれば、例えばサステナブル開示規制(SFDR)を代表とする様々な報告義務の増加に対応するために必要性を感じている投資家もいました。
業界マップの必要性:ソフトウェアの必要性を感じていたとしても、たまたま検索に引っかかったところと価格等について交渉して決めている投資家が多く、インパクト投資情報プラットフォームの業界マップが必要と考えるようになりました。
こういった経緯で、SJFは、同業ファンド、ICMなどの業界コミュニティを通じて様々なサービス提供者の調査を行いました。そして、2021年には15社以上のプロバイダーとインタビュー等を通じてサービス内容を精査しました。その結果、候補に上がったのは、以下になりました。以下は、ImpactShareによる抄訳になりますので、ぜひ原文もご確認ください。
次回後編では、SJFが上記分析の結果、どのサービスを選んだのか、その理由をご紹介します。
参考資料
SJF Ventures Maps the Market: Impact Measurement and Management (IMM) Data Platforms