グローバル企業がLP出資をするClosed Loop Partnersを前編及び後編の2回に分けて概要及び特徴をご紹介してきました。同社は社会的リターン及び金銭的リターンを並行して追求するファンドを4本組成しています。本記事では、どのように社会的リターンを測定・管理しているのかについて、同社が毎年発行しているインパクトレポートを参考に内容を見ていきたいと思います。
本インパクトレポートは、大きく4つの柱で構成されています。
概要:1年間の投資実績のほか、社としてのサステナビリティに関する取組み(CO2排出削減量や資源のリサイクル量など)
同社の運用するファンドごとの実績
投資セクターに関連した定量的な分析結果
SDGへの貢献度合いを分析した結果
投資事例とそれらが創出するインパクトについてのケーススタディ
イノベーションセンターの実績:イノベーションセンターで実施した実証実験の成果
インパクト測定の方法
本記事は、4のインパクト測定に焦点をあてて見ていきましょう。
インパクト測定プロセス概要
①指標を設定する
投資先が創出し得る、社会的環境的インパクトを特定し、そのインパクトを測定するための指標を設定します。
例えば、同社の運用するベンチャーキャピタルファンドは、プラスチック包装や食・農業、ファッション、サプライチェーン産業における革新的な技術やビジネスモデルへの投資をしています。インパクトの指標としてGIINのIRIS+に沿って、セクターや貢献度合いを測っています。
水やエネルギー資源、地球環境への配慮が最も貢献すべき項目と位置付けられ、温室効果ガス排出削減量、リサイクルされた量、水資源の削減量、雇用創出の4つが重要な指標として記されています。
一つ一つの案件に加え、ファンドのポートフォリオ全体についても、上述の4つの指標を活用して測定をしています。
②ベースラインを決める
投資判断時のインパクト創出の状態がその後どうなると期待されるのかベースラインを予想をします。その際、もし投資しなかった場合と投資した場合に生じるアウトカム(※)の差異を分析します。
※アウトカムについてはこちらの記事参照: インパクト投資の基礎:インパクト評価(IMM)の実施内容 3つのポイント
③目標値を決める
ファンドごとに定義された指標の目標値を決めます。
④進捗確認する
投資後、投資先が提供する開示・報告を通じてClosed Loop Partnersは投資先のインパクト創出の進捗状況を確認します。
一般的にインパクト創出に関するデータを投資先から入手できるのかどうかがよく懸念されますが、Closed Loop Partnersの場合には、出資を受ける条件に投資先がデータ提供することが含まれています。データ収集は四半期ごとに行われています。
⑤インパクト・パフォーマンスを報告する
インパクト・パフォーマンスをファンドごとにアドバイザリーボードや投資家、その他ステークホルダーへ四半期ごとに報告します。
報告内容には、定量的なパフォーマンスに加え、定性的な成果についても紹介がされています。
実績や事例の紹介
ベンチャーキャピタルファンドでは、全体として以下のインパクトを創出しているとしています。
また、事例として、例えばバイオマスの会社及び指標が紹介されています。
まとめ
Closed Loop Partnersでは年に1回インパクト・レポートがウェブサイトで公開されているので是非参考にしていただければと思います。60ページにも亘りますが、ビジュアルなど随所に工夫が施されており、大変読みやすくなっています。
「サーキュラーエコノミーの実現」という使命がより具体的に伝わるよう、インパクト指標の特定からそれぞれの貢献度合いを明確に紹介しているものと考えられます。
<参考資料>